美しいものをより美しく…繊細でアーティスティックなジュエリー撮影

杜の都 仙台のフォトグラファー:スタジオドーア戸枝正輝さん

杜の都仙台市青葉区。広瀬川を見下ろすロケーションに恵まれたマンションがフォトグラファー、スタジオドーア・戸枝正輝さんの自宅兼スタジオである。

「ここは霊屋下といいまして仙台伊達家代々の霊廟がある場所なんです」と戸枝さん。なるほど、道理で静かで緑も豊かなはず。広瀬川を挟んで緑に囲まれた東北大学のキャンパスが見える。
戸枝さんが最も得意とするのが宝飾品(ジュエリー)の商品撮影だ。今日は東京のデザイン事務所からの依頼でDMに掲載するジュエリーを撮影中である。
「商品は宅急便で送って頂いて、撮影した画像はdropoxを介して納品しています」

リングを立ててセットしながら戸枝さんは語る。

リングを立ててセットしながら戸枝さんは語る。

「もともとジュエリーの専門誌を発行していた出版社の写真部に在籍していたんです。
そこでジュエリーの特性や商品撮影について学びました。当時はフィルムでの撮影でした。
商品をセットしてポラロイドで露光等を確認してパシャッと。今はデジタルなのでこのようにそれぞれ違う色のジュエリーでも画面を見ながら細かい調製が可能で、より美しい画(え)にすることが出来ます」
同社に8年在籍した後に独立、宝石の街御徒町(東京都台東区)でスタジオドーアとしての活動を始める。

ジュエリーの撮影は他の商品撮影に比べて難しいと言われるが、その辺の苦労について伺うと
「実際に宝石売り場でジュエリーを手にされた方はお分かりかと思いますが、実物は角度によってキラキラと光の反射による表情が豊かに見えます。その実物の質感・キラキラ感をいかに静止画で再現するか、だと思います。ライトを明るくすれば輝きは増しますが、写真としてハレーションを起こしてしまいカットの表情が見えなくなってしまう。同じデザインのジュエリーはあっても、使用される宝石は二つと同じものがない。その一つ一つの最高の表情を切り取るには置き方や角度、その他様々なノウハウを重ね合わせる必要があります。」と、言っている間に最初のカットが画面に表示される。画像を拡大しながら厳しい目でチェックする戸枝さん。

撮影商品であるジュエリーのセッティングをする戸枝さん

撮影商品であるジュエリーのセッティングをする戸枝さん

 御徒町から仙台に拠点を移したのは7年前。2011年の東日本大震災で、仙台にお一人でお暮らしのお母様が被災されたことで故郷でもあるこの街に戻ってきた。

「ちょうど知り合いの牧師から『ボランテイア団体を立ち上げるので手伝って欲しい』と言われ、その団体の広報担当をすることにもなったんです。給料も弾むと言われましたが、そうでもなかったですね(笑い)・・・。私が戻ってきたのは2011年の9月ごろですが、仙台市内はところどころが痛んでいたものの平穏を取り戻しつつあると感じました。ところが津波を受けた地域に行くとガラッと風景が変わります。田んぼのあちこちに小さい船から結構大きな船まで散らばっていて建物はボロボロ、その上に車が載っていたり瓦礫の集積所があちこちで山となっていました。瓦礫と言っても流木や土砂では有りません、ほとんどが普通の家庭の中あるものばかりが泥だらけで積まれていました。『ここに人が居たんだな、そして一瞬にして全てが破壊されてしまったんだ』私はその凄まじい破壊力の前にただただ立ち尽くすだけでした。
2014年にその仕事にひと段落をつけましたが、とある仮設住宅の方々とは今でも繋がりが有り時々お茶っこ(茶話会)や昼食会、日帰り旅行などに誘われます。そんな時は記念写真を撮ったりして皆さんに喜んでもらっているんじゃないかなと思っています。
フリーのカメラマンに戻った後は以前からのクライアントや、新規のクライアントなどジュエリーを始め雑貨、食品や料理などのスタジオ撮影、店舗や人物などのロケの仕事も積極的に行っています。最近では学校関係で高校総体のスポーツ撮影の依頼がありました。スポーツは動きが早く激しいものが多い、いいシーンを収めるのが難しいのですが結構楽しいですね。終わったときは、なぜか凄くテンションが上ってます。」仙台に映ってからの7年間を振り返り笑顔で語る戸枝さん。

1カット目の撮影が終わり一息ついている戸枝さんに撮影の苦労や失敗談を伺ってみたところ、
「フィルム時代からデジタルへ移行するときは少し苦労しました。フォトショップもバージョン5から使っていますが、ガイドブックとか見て書いてある通りやっているつもりなのに、その通りにならなかったり…しばらくパソコンと格闘しました。
デジカメの説明書も見慣れない言葉ばかりで、理解するのに苦労しましたが、それまでの知識を応用して普通に撮ればいいことがわかりました。最初は一眼レフで知識を得て次に商品撮影用にフェーズワンP21というセンサーだけのデジタルバックを買いました。車が買える値段でしたけど今後のことを考えての投資でした。それを4×5のカメラにアダプターをつけてニコンのAM110mmで撮るスタイルです。10年以上前に買ったものですが、もちろん今でも現役、一眼レフにはない次元の違う高精細な画像が得られます。ジュエリーやその他の商品撮影には欠かせないですね。

戸枝さん愛用のカメラ
戸枝さん愛用のカメラ

失敗を言えばきりが無いくらいありますが、一つ今でも悔やんでいることがあります。ある年のゴールデンウイーク前に撮影の依頼が立て込んでいた時がありました。思うように進まず多少焦っていましたときに大手宝飾会社のクライアントさんから電話で大急ぎで撮影してほしいと懇願されました。先方も困っている様子でしたが、こちらとしても先に進めなくてはいけないものがあっため断ってしまいました。それ以来・・・、他の部署の方とは繋がりがあったものの、その方からはお声がかからなくなりました。「あのとき無理してやれば出来たのに」という思いがいつまでも頭をよぎりました。それ以来、相手の立場を理解し「出来ないことより、どうしたら出来るか」ということを考えるようになりました。
そんな思いを抱きながら震災後、相田みつをの詩の中に「失敗したっていいじゃないか人間だもの」というのを見て何かとても慰められた気がしました。」と。 うん、確かに共感できます。

2カット目の撮影商品のジュエリーを丁寧にクロスで拭きながらセットを始める戸枝さんに撮影時のモチベーションについて伺ってみると、
「画(え)の作りやライティングをある程度イメージして準備万端整えて撮影に入ります。クライアント様との打ち合わせでは「おまかせ」と言われても何かご自分で考えているんじゃないかと思ってお話をします。クライアント様は控えめに拘りがある場合も多く、商品の写りが「もうちょっとこうなれば良い、ああなれば良い」と言う要望も内在しています。言葉の端々にそれを感じながら真摯に向き合います。時にテスト撮影を行いその要望に答えるようにしています。
それから自分の撮影環境ではこれまで全て大型ストロボでのライティングでしたが、ジュエリーなど小さなものはLEDに変えました。LEDは省電力でとても明るく電球が熱くありません。その上長寿命、簡単に割れない、そして軽いときて劇的に環境が改善されました。多少電球の個体によって色温度が違うみたいですが、実際の撮影では全く問題ないです。ただマイナス面としてはシャッタースピードが400分の1秒から4分の1秒になったためカメラぶれに気をつけなければならないと言うことですが、モニターで確認すれば良いことなので問題ないですね。」とのこと。確かにクライアントのリクエストを形にすることはものすごく重要な点かもしれません。

最後にLIFEをご覧になられてる方に戸枝さんから一言お願いします。

「これまでいろいろありましたが、私も時代の変化に戸惑いながらも恩恵を受けていると思っています、これからも変化に対応し仕事とは真摯に向き合いたいと思っています。」

会社名/名称 スタジオ ドーア 戸枝 正輝
ご紹介期間 2018/09/20 ~ 2018/12/31
所在地 〒980-0814宮城県仙台市青葉区霊屋下2-1-207
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